TECHNICAL Q & A

ワークフローツール導入
ご質問への技術回答(一問一答)

2026年5月20日 | 株式会社ピースフラット

頂戴した懸念事項を一問一答形式で整理し、各項目について「できる/できない」だけでなく、なぜそれが可能なのか(仕組み・原理)を解説した資料です。

前提となる弊社のアプローチは、既製パッケージに業務を合わせるのではなく、業務に合わせて設計するスクラッチ開発(受託開発)です。以下の回答もこの前提に基づきます。

1. 既存フォーマット(テンプレート)について

Q1
現在使っている申請様式を変更せず、そのまま運用できますか?
● できます

仕組み・原理

鍵は、ワークフローシステムを「申請書を作る道具」ではなく「申請書を運ぶ道具」として設計することです。

一般的な既製ツール
入力フォーム=データ=承認対象が一体化。様式を電子フォームに作り直さないとシステムに載らない。様式が分岐するほど画面設計が増える。
弊社の設計
申請書本体(Excel/Word/PDF)は「添付ファイル」として扱う。システムは「誰が・いつ・どのルートで・今どの状態か」という制御情報だけを別に持つ。

承認者は添付された申請書ファイルを開いて中身を確認し、システム上では承認ボタンを押すだけです。申請書の「中身」と、承認の「流れ」を別レイヤに分離しているため、様式が何種類あっても、将来何度変わっても、システム改修は発生しません。

― 原理 ―
申請書(ファイル)とワークフロー(制御情報)を分離する。様式はシステムの「中身」ではなく「添付物」として扱う。

前提・ご確認事項

注意:システムは添付ファイルの中身(記入された金額など)を自動では読み取りません。一覧表示や検索キーにしたい項目(件名・申請種別・金額レンジなど)は、申請時に最小限のメタ情報として別途入力いただく形になります。どの項目を持たせるかは要件整理で確定します。

2. サイボウズ Office との連携について

Q2
メール通知に頼らず、サイボウズデスクトップアプリで承認依頼に即時に気付けますか?
▲ 条件付きでできます(環境確認が必要)

なぜメール通知だと困るのか

御社のWebメールは一定時間で自動ログアウトします。つまり「通知を受け取り続ける受け皿が常駐していない」のが問題の本質です。一方、サイボウズデスクトップアプリは常駐しています。だからそこへ通知を出せばよい、という発想になります。

仕組み・原理

ここで一つ壁があります。サイボウズデスクトップアプリの通知は、基本的にサイボウズ Office自身に起きたイベント(メッセージ着信など)に紐づいて表示されます。外部のワークフローシステムで起きたことを、アプリは直接は知りません。

そこで「翻訳」を挟みます。ワークフロー側で承認依頼が発生したら、その内容をサイボウズ Office内に通知(メッセージ等)として書き込みます。すると、サイボウズから見れば「自分のところに新着メッセージが来た」という自分自身のイベントになり、デスクトップアプリは普段どおりそれを通知します。

ワークフローシステムで承認依頼が発生する
その内容を、対応する通知としてサイボウズ Office内へ書き込む
サイボウズが「自分の新着」として認識し、デスクトップアプリが通知を表示
利用者が通知をクリック → 通知に埋め込まれたリンクから承認画面へ遷移
― 原理 ―
外部システムのイベントを、サイボウズ内部のイベントに「変換」して書き込み、既存の通知の仕組みに相乗りさせる。

前提・ご確認事項

条件付きとした理由:サイボウズ Office内へ通知を書き込む具体的な手段(連携API等)は、御社がお使いのエディション・バージョン(クラウド版/パッケージ版)によって利用可否や方式が異なります。kintone や Garoon に比べ、サイボウズ Office は外部連携の選択肢が限定的です。実現方式は要件整理ワークショップで実環境を確認のうえ確定します。書き込みが難しい場合の代替として、補助的なチャット通知の併用などもご提案可能です。

3. 機能要件について

Q3
兼務している人でも、それぞれの部署で正しく承認できますか?(兼務対応)
● できます

なぜ普通のシステムでは崩れるのか

多くのシステムは「1人=1所属=1役職」を前提にユーザを登録します。承認者を「○○部の課長」と役職で指定したとき、その人が複数の顔(部署A課長/部署B主任)を持てないと、兼務時に承認がうまく回りません。

仕組み・原理

解決策は、「人」と「役職・所属」を切り離し、1人に複数の役割をぶら下げるデータ構造にすることです。1人のユーザに対して「部署A・課長」「部署B・主任」といったポスト(役割)を複数登録します。承認ルートは「人名」ではなく「ポスト」で指定します。

申請が来ると、システムは該当ポストを持つ人を探して回付します。結果、同一人物が、部署Aの案件では課長として、部署Bの案件では主任として、それぞれ別々に承認画面に並びます。

― 原理 ―
ユーザと役割(ポスト)を多対多で分離する。ルートは「人」ではなく「ポスト」に対して引く。
Q4
申請者の役職に応じて承認ルートを自動で切り替え、不要な回付を省けますか?
● できます

仕組み・原理

ルートを「申請のたびに人が手で指名する」のではなく、「ルール表(マスタ)から自動で導き出す」方式にします。

あらかじめ承認ルートマスタに、「申請種別 × 申請者の役職 × 金額レンジ × 部署」→「経由するポストの並び」という対応表を定義しておきます。申請が出された瞬間、システムは申請者の属性(役職・部署)と申請内容(種別・金額)を条件にこの表を引き、承認者の並びを自動生成します。

これにより「課長本人が出した申請に課長承認は付けない」「少額なら部長を飛ばす」といった制御が自動で効き、不要な上位・下位者への回付を抑止できます。

― 原理 ―
ルートを固定で持たず、申請者の属性 × 申請内容 × ルール表で、その都度ルートを計算する。
Q5
申請ごとに一意の番号を自動で付け、立案番号順に一覧管理できますか?
● できます

仕組み・原理

採番は、システムが「連番カウンタ」を一元管理することで実現します。申請が確定した瞬間に「年度+申請種別コード+連番」の番号を払い出します。複数人が同時に申請しても、内部の排他制御により番号は順番に払い出され、重複は起こりません。

「データベース化」とは、申請1件をデータベースの1レコードとして、番号・申請者・日付・金額・状態・添付ファイルの所在などを項目(カラム)に分けて保存することです。Excelの台帳と違い、構造化されているため、番号順の並び替え・絞り込み・検索が確実に行えます。

― 原理 ―
採番カウンタを一元管理し排他制御で重複を防ぐ。1申請 = 1レコードの構造化データとして保存する。
Q6
申請様式に加えて、補足資料や参考資料も添付できますか?
● できます

仕組み・原理

1件の申請レコードに対して、複数の添付ファイルを1対多で紐付けます。ファイルの実体はストレージに保存し、データベースには「どの申請の・何という名前の・どこにあるファイルか」という紐付け情報を持たせます。

この構造により、申請様式そのものと、補足・参考資料を区別して管理できます。後述の「承認後の追記」(Q9)と組み合わせれば、概算時の資料・確定時の資料、というように承認の世代ごとに添付を分けて履歴管理することも可能です。容量・形式・最大件数の制限は要件定義で確定します。

― 原理 ―
申請レコードと添付ファイルを1対多で紐付け、実体はストレージ・紐付け情報はDBで管理する。
Q7
承認が止まったまま放置された場合、自動でリマインドできますか?
● できます

仕組み・原理

システムが定期的に(例:1日1回)、「承認待ちのまま一定日数が経過したレコード」を自動で探し出します。この「一定日数」の閾値は、申請種別ごとにマスタで設定できます(急ぎの申請は短く、など)。

閾値を超えた申請が見つかると、今まさにボールを持っている承認者(現在のステップの担当ポストの人)へ自動で通知します。さらに停滞が続く場合は、上位者へエスカレーション通知することも設定可能です。人が目視で滞留を見張る必要がなくなります。

― 原理 ―
経過時間を定期的にチェックし、種別ごとの閾値を超えたら現担当者へ自動通知する。
Q8
承認後の申請書・添付資料を保存し、キーワードで素早く検索できますか?
● できます

仕組み・原理

承認が完了しても、申請レコードは削除されず「承認済み」という状態でデータベースに残り続けます。データは消すのではなく、状態を遷移させていく考え方です。

検索は2種類の仕組みを併用します。①番号・申請者・日付・金額・種別といった構造化された項目への絞り込み検索。②本文や添付ファイル名に対する全文検索。②では、あらかじめ検索用の「索引(インデックス)」を作っておくため、申請件数が数万件規模に増えても高速に探し出せます。

― 原理 ―
データは消さず状態遷移させて保持する。構造化項目の絞り込みと、索引による全文検索を併用する。
Q9
承認後のデータに、確定金額の反映や支払日などを後から追記できますか?
● できます

なぜ難しく感じるのか

多くのシステムは「承認=完了・凍結」と捉え、承認後のデータを書き換えられません。御社の要件(概算→確定金額の反映、経理の支払日入力など)は、この「凍結」が壁になります。

仕組み・原理

そこで、承認済みレコードに対して「追記の種類によって処理を切り分ける」設計にします。

A. 単純な追記
経理部門による支払日の入力など、承認の前提を変えない情報。そのまま追記欄に記録します。
B. 再承認を伴う追記
概算金額を確定金額に直すなど、承認の前提が変わる情報。「再承認フロー」を起動し、必要な承認者へもう一度回付します。

そして、AもBも「いつ・誰が・何を追記したか」をすべて監査ログに残します。これにより、後から追記しても「いつ時点で何が承認されていたか」をたどれる状態を保てます。

― 原理 ―
レコードを凍結せず、追記内容が「承認の前提を変えるか」で、単純追記と再承認フローを切り分ける。すべて監査ログに残す。